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すぐれもの

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再開を機に、はじめましてのご挨拶とありがとうをこめて、作りました。

すぐれもの

世はきみにつれ


うたは世につれ
世は人につれ
君と出会って別れるばかり
ごめんね地球を愛さずに
目の前の君にばかり夢中

うたは世につれ
世は人につれ
君と出会って別れるばかり

生きる理由その一


茨の道ではないけれど
迷っては立ちすくみ悩んでは振り返り
僕らははっきりしない時間を過ごしていく

機嫌のいいときに笑い機嫌の悪いときに笑わず
あぁまた君に心配をかけてしまう

気がついたんだ何のために生きるのか
果ての見えそうで見えない道を
一日の終わりに今日あったことを話そう
君が笑える話をさがすため僕は生きている

食うや食わずではないけれど
求めては求めすぎ飽きては振り捨てて
心にすっきりしない穴を拡げていく

調子の良いときに笑い調子の悪いときに笑わず
あぁまた君を困らせてしまう

気がついたんだ何のために生きるのか
果ての見えそうで見えない道を
一日の終わりに今日あったことを話そう
君が笑える話をさがすため僕は生きている

だって僕の空元気や作り笑いにも
黙って君と微笑んでいる受け止めている
気がついたんだ何のために生きるのか
果ての見えそうで見えない道を
一日の終わりに今日あったことを話そう
君が笑える話を探すため僕は生きている

君の好きな場所へ


君と出会えて良かったと思うこと何度もある
人は出会い別れるものそんな気がしないのは不思議

君と出会ってなかったら今頃はどうだろうか
人はもしもの時のため
生きているわけではないもの

人が思うより僕はせっかちで
人が思うより君は几帳面
人が思うより僕は楽天家
人が思うより君は泣き虫だ

君の好きな場所へ行こう僕の思いも寄らぬ所
僕の好きな場所へ行こうそれで人生を埋めていこう

君と出会ってよかったと思うこと増えている
人は出会い別れるものそんな気がしないのが不思議

君と出会ってよかったと思うこと増えている
乗換駅の喧噪と人いきれにむせながら

人が思うより僕は野心家で
人が思うより君は堅実で
人が思うより僕は滅茶苦茶で
人が思うより君はくちゃくちゃだ

君の好きな場所へ行こう僕の思いも寄らぬ所
僕の好きな場所へ行こうそれで人生を埋めていこう

君の為だけに生きて行けるかな
君の為だけに死んで行けるかな

君の好きな場所へ行こう僕の思いも寄らぬ所
僕の好きな場所へ行こうそれで人生を埋めていこう

からあげ


僕は考えてみるんだ
考えているんだ
ほかにすることがないから

台所に立つ君の肩の線が理由もなく好きで
考えなしに僕は鼻を寄せる
確かに邪魔だね
僕の好物はトリのからあげで
君は卵をといている

これは幸福かも知れない
考えもなしに手にしている気がする

だから考えてみるんだ
幸福の何たるかというやつを
僕は考えているんだ 
ほかにすることがないから

台所に立つ君の肩の線が理由もなく好きじゃ
邪魔するだけで僕は無能だから
理由を探すよ
君の鎖骨が手羽先のようで
すぐに食べたくなるのかな

これは幸福かもしれない
考えて出した答に君が笑う

だから考えてみるんだ
幸福の何たるかというやつを
僕は考えているんだ
ほかにすることがないから

僕は考えてみるんだ
からあげの何たるかというやつを
僕はそれで充分だ
あとは君が笑えるなら

ありがとう


ありがとう
いつもの道が
今日は好きに思えた
隣りに君が居ただけで

ありがとう
出会ったことは
偶然でしかないけれど
永遠なんてないけれど

ありがとう
冷たい夜が
待ち遠しくも思えた
隣りに君が居るだけで

ありがとう
僕の手を握り
その胸に引き寄せた
永遠なんてないけれど

ありがとう
生きていくことが
何故だか楽しくなった
隣りに君が居るだけで

おねがい


歩いてきたんだよふた駅手前から
君がよく電話で話してたおさんぽやまを乗り越えて
確かめなくちゃ気が済まないよ
これからふたりで来るかも知れないその前にね
申し訳ないけど歩いて下さい
僕と一緒に歩いて下さい
願わくば君が散歩好きでありますように

歩いてみたんだよ知らない町だから
君がよく電話で話してた神田川沿いを伝って
ふたりですごす半年先など
思い浮かべては一人あやしく笑いながら
申し訳ないけど歩いて下さい
僕と一緒に歩いて下さい
願わくば君が散歩好きでありますように

道端の猫ににゃーんと名付け
ふたりの町にふたりの道に仕立てながら
申し訳ないけど歩いて下さい
僕と一緒に歩いて下さい
いつまでも君が散歩好きでありますように

言葉を知らないままならば


退屈しのぎのような関係と
照れながら彼が話すのを
その時は聞き流してはいましたが
なんだか寂しくなりました。

言葉を知らないままならば
醜い様もみせず済んだ
言葉を知らないままならば
二人は上手くやれたのかも

あなたが最後の人と決めたよと
真っ直ぐな彼の告白も
その時はのぼせた顔でいましたが
何故だか寂しくなりました

言葉を知らないままならば
子供のように笑えた筈
言葉を知らないままならば
二人は上手くやれたのかも

確かめたいときに欲しいのは
誰かの歌のようなものでいい
手垢に包まれた台詞でいい
懲りない大人の言葉がいい

言葉に縛られ導かれ
疑うことも忘れました
言葉を知らないままならば
全ては上手くやれたのかも

いつものように


私の何が分かるの
本当の私は私も分からないけれど
確かにあなたの前で少しは素直になれたもの
だけど嘘をついていたそれも確か

そんな顔していたと今まで気付かなかった
君はそんな僕を知って何かに気付いたんだね

あれが最後だったなんて笑えば済む話なれど
JRのホームで小さく
君は手を振っていたいつものように

あなたの望む私がわかるほど私は
私を演じてきたけれど
確かにあなたの前なら言えない本音も言えたもの
あなたの喜びそうな それも確か

そんな顔していたと今まで気付かなかった
だって君は笑っていたよ笑っていたんじゃないのか

あれが最後だったなんて誰なら慰めてくれる
JRのホームで小さくずっと手を振っていたいつものように

だって君は笑っていたよ笑っていたんじゃないのか

あれが最後だったなんて誰なら確かめてくれる
JRのホームで小さく
君は手を振っていたいつものように

やさしさへの道


どれくらいのやさしさが欲しいのでしょう
あげたりまたもらったり繰り返して知るのでしょうか
いつまでもって誰よりもって今よりもって思えば
それならいっそ二人でいっそ分け合えばってなるの
遠くなる記憶に人は意味を求めてさまよう

これくらいと量れない 加減がむずかしい
落としたりまた拾ったり探す度見失う
これまでだってそれまでだって丁度良いってことはなく
それならいっそ一人でいっそ暮らそうかってなるの
遠くなる記憶に人は意味を与えて
安らかなる心よ
寒い寒い一人の夜に
誰かを励ますような言葉思いつくのは
やさしさですかやさしさですか
やさしさへの道は長く厳しい
いつも道にたたずむ迷い人

やすらがない心よ
分かり合えぬ心よ
あたりさわる心よ
わかり切れぬ心よ

真説トイレの神様




僕にまだ毛も生えてない頃
うちにはおじさんが住んでいた
お父さんは仕事で留守勝ち
だからおじさんとよく遊んでた

いつも働いてなかったのは
あの頃は学生だったから
お昼から酒びたりだったけど
トイレ掃除だけはするおじさん

トイレには神様がいるのさ毎日きれいに磨いていたら
神さまは必ずご褒美にお金を沢山くれるのさ
「撥ね飛ばしたら即拭きなさい」



お父さんはよく怒鳴っていた
居候にやる酒はもうないと
最後には二人とも酔っ払って
一つの布団に転がった

お母さんはよく悪口を言った
早稲田に行ってもあれではね
おじさんは何を言われても
笑っていたのは酒のせいか

トイレには神様がいるのさ毎日きれいに磨いていたら
神さまは必ずご褒美にお金を沢山くれるのさ
「撥ね飛ばしたら即拭きなさい」



ある朝おじさんは僕を呼び
掃除の仕方を伝授した
ブラシと洗剤の手加減
水と雑巾の手加減

「おじさんはお酒はひどいけど
毎日毎日磨いてんだ」
正月に僕にだけこっそりと
耳打ちしたよ臭かった
お年玉をくれたことはない



卒業して何年目かの春に
うちからおじさんは出て行った
なかなか結婚もしないうちに
広いマンションを買ったらしい

僕にも毛が生えて十年
一人暮らしを始めた
煙草のヤニまみれのカーテン
トイレだけは綺麗ねと彼女が言った

トイレには神様がいるのさ
毎日きれいに磨いていたら
神さまは必ずご褒美に
お金を沢山くれるのさ
君も使うときは気をつけて



おじさんのことは忘れてた
身体を壊したはと聞いていた
僕は僕の未来に燃えていた
弟には子供も出来ていた

お父さんはいつも悪口を言った
どうしようもない人間だ
お母さんはいつも悪口を言った
早稲田を出てもあれではね

どうしてだろうか人は
ケチとも言われない人でも
何よりお金が頼りだと
つぶやく夜があるのさ
「お金さえあれば生きられる」



警察がおじさんの死を告げた
一番近い身寄りの我が家へ
異臭にお隣さんが気付いて
我慢しきれず通報した

お父さんがおじさんを確認した
八月におじさんは腐ってしまった
婦警さんがお母さんを引き止めて
見ないほうがいいですと言った

人には良い所悪い所
あるものと親は常々言った
それなのにおじさんのことだけは
一度も褒めたりしなかった
死ぬまで一度もなかった



部屋の片付けの為に初めて
3LDKを訪れた
ゴミと空き缶だらけの家なのに
トイレだけは綺麗だった

片付けものの一番下から
預金通帳が出てきた
八桁を超える預金と
マンションが彼の遺品

おじさんの携帯電話には
久しく着信もなかった
最後に癌と酒盛りを
毎晩続けてみたんだね
死ぬまで続けてみたんだね



3LDKが無事売れて
預金は兄弟が分け合った
残った親族はみんなみんな
沢山のお金に恵まれた

おじさんは神様になった
毎日きれいに磨いていたら
神様は必ずご褒美に
お金を沢山くれるのさ
おじさんは神様になった

「撥ね飛ばしたら即拭きなさい」

一生のおねがい


ひとことでおさまるほど
すでに人生は簡単じゃない
だから
いつまでも分かり合えないこと
受け止めようね

誓います君にだけ
死ぬまで君を受けとめる

年月を重ねた分
すべてともにした気になるけれど
それは
幸せな思い違いであると
受け止めようね

誓います君にだけ
死ぬまで君に憧れる

誓います君にだけ
死ぬまで君をあたためる

Information

型番: A226
発売:2014年 03月
価格:¥1,100

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当時の言

 2013年、石村吹雪は再開しました。っかく再開するのであれば、ひとつ、名刺代わりの作品を作っておきたいと考えました。

 はじめて聴く方に、やさしく。長年のリスナーの皆様には、感謝を込めて。

 再開しても相変わらず、月々ちがう歌をうたっています。なので運のよしあしにより、おかしな歌ばかり歌っている人ですね、やかましい歌を歌う人ですね、といった印象を受ける方もありましょう。ですから、はじめて会った方にも、 ああ、こうして静かに聴いていられる歌もうたっているのね。

 と思っていただくことが出来るものを集めたぞとかたく信じて、すぐれもの、と題しました。

 勢い、20世紀に制作したものも含まれているので、いわゆるベストという見方になるかも知れません。が、これはそういう意味では制作されていません。ベストとは、聴く側それぞれに選抜されるものです。


2014年3月20日より、販売開始。

ご挨拶

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