僕はやっぱり、君がその魔法のごとき手管で作り出す、とりのからあげを、指をくわえて待っているだけの存在なんじゃないかと思ってしまったんだよね。
からあげ
台所に立つ君の肩の線が理由もなく好きで
考え無しに僕は鼻を寄せる
確かに邪魔だね
僕の好物はトリのからあげで
君は卵をといている
これは幸福かも知れない
考えもなしに手にしている気がする
だから考えてみるんだ
幸福の何たるかというやつを
考えているんだ 他にすることがないから
台所に立つ君の肩の線が理由もなく好きじゃ
邪魔するだけで僕は無能だから
理由を探すよ
君の鎖骨が手羽先のようで
すぐに食べたくなるのかな
これは幸福かもしれない
考えて出した答に君が笑う
だから考えてみるんだ
幸福の何たるかというやつを
考えているんだ 他にすることがないから
だから考えてみるんだ
からあげの何たるかというやつを
僕はそれで充分あとは君が笑えるなら
心配
君は君のことだから気づいていないけど
会う度きれいになっていく
お世辞にも見栄えのしない
街で声を掛けられることもない
だから安心だったのに
このまま君は毎日毎週
きれいになってしまうのかな
そしたら君は僕など忘れて
きれいになってしまうのかな心配
君は君のことだから気づいていないけど
会う度に変わっているんだよ
見た目より手慣れてなくて
指遣いも不器用そのものだし
それも安心だったのに
このまま君は毎日毎晩
上手になってしまうのかな
そしたら君はそしたら君は
どこかへ行ってしまうのかな心配
あれもこれもそれも
僕のせいだというけれど
このまま君は毎日毎週
きれいになってしまうのかな
心配ばっかりしている僕に
愛想を尽かしはしないかと心配
はやくてごめん
はやくてごめん
やわくてごめん
あわくてごめん
よわくてごめん
はやくてごめん
青くてごめん
泡食ってごめん
あほ言ってごめん
はやくてごめん
あかくてごめん
たかくてごめん
かたくてごめん
おねがい
歩いてきたんだよふた駅手前から
君がよく電話で話してたおさんぽやまを乗り越えて
確かめなくちゃ気が済まないよ
これからふたりで来るかも知れないその前にね
申し訳ないけど歩いて下さい
僕と一緒に歩いて下さい
願わくば君が散歩好きでありますように
歩いてみたんだよ知らない町だから
君がよく電話で話してた神田川沿いを伝って
ふたりですごす半年先など
思い浮かべては一人あやしく笑いながら
申し訳ないけど歩いて下さい
僕と一緒に歩いて下さい
願わくば君が散歩好きでありますように
道端の猫ににゃーんと名付け
ふたりの町にふたりの道に仕立てながら
申し訳ないけど歩いて下さい
僕と一緒に歩いて下さい
いつまでも君が散歩好きでありますように