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君の知らないうた

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新しいうたをつくっては歌うと言う日々の中で、それぞれのうたには旬または賞味期限のようなものがあり、不幸なことにあまり歌われていないうたがありました。実はそれらの事をひそかに僕は「君の知らないうた」と呼んでいます。

君の知らないうた


君は知らないそして誰も知らないうた
だから僕が歌うよ かわりに

平凡な毎日です でも今朝窓を開けたときの空気
いつかどこかで浴びた風 去年と同じ日浴びた風
確かに巡った季節に気付いたこと
何だか嬉しくて 誰かに聞かせたい

君は知らないそして誰も知らないうた
だから僕が歌うよ かわりに

あるでしょう?キッチンで
あるでしょう?お風呂で
思わず歌ってしまった知らないうた

平凡な毎日です あれから何年もの時が流れ
辛い思い出の帰り道 今では笑える帰り道
久しぶりに彼奴を思い出して
何故だか嬉しくて 彼奴に聞かせたい

君は忘れた そしてみんな忘れたうた
だから僕が歌うよ かわりに

あるでしょう?トイレで
あるでしょう?玄関で
思わず歌ってしまった 知らないうた

君は知らないそして誰も知らないうた
だから僕が歌うよ かわりに

手紙


何が何でもあなたを手にしたくて
その思いを伝えられたらと
特別手紙を書いてみています

慣れぬ手つきで気持ちというモノを
あるがままに表したいのに
格別肩が凝るばかりのようです

宛名を何故か真っ直ぐ書けない僕は
いくつも無駄を重ねて生きているでしょう

書けば書くほど誰かの台詞みたいで
この気持ちが分からなくもなり
今さら辞書など開いてしまいます

綴る言葉の成りゆき振り返れば
あなたのことを讃美するでなく
日記のようで呆れてしまいます

このまま僕が重ねてみせた言葉に
あなたが何も応えてくれないとして

このまま僕は変わらず生きているでしょう
そのまま僕はあなたに見せて行くでしょう

渚橋


見上げた空は脳天気 改札口の空元気
うんざりしたんだ 届けたい言葉の残高

どうせ一日僕のいない社会なら
きっちりくるくる回っていくだろう

逃げてきたんだよ
知ってる電車の果てまでと
逃げてきたんだよ
初乗り切符を忍ばせて 

呆れた浜に人影が 平日昼間の人だかり
この人たちにも届かない夢があるのか

何故に毎日あてにもされず生真面目に
きっちりくるくる回って来たんだろう

逃げてきたんだよ
いつもの電車の果てまでと
逃げてきたんだよ
帰りの切符は持ってるよ

どうせ一日僕のいない社会なら 
きっちりくるくる回っていることだろう

逃げてきたんだよ
知ってる電車の果てまでと
逃げてきたんだよ
帰りの切符は持ってるよ

汗ばむ足に絡みつく 欄干抜ける潮と風
渚橋まで何をしに来たか
木曜日

夏のたより


ごぶさたしています。お元気ですか
君が僕を思い出すのは 旅先
去年と間違えた文字まで同じ
僕が君を思い出すのもそのとき

何のつもり 夏のたより
今さら何を語る訳じゃない
何のつもり 夏のたより
それなら電話してもいいのかな

あの頃のことも あれからのことも
仲間の誰にいうこともなかったよ
女は分からない そんなことばかりさ
今の今もハガキ見つめて思うよ

何のつもり 夏のたより
君は確かに高い空が好きで
ほとんど君の或いは僕の
思い出話がことのほか好きだった

お元気ですか。ごぶさたしています。
今年のハガキは二行だけ多かった

何のつもり 夏のたより
次の九月から九州で暮らします
何のつもり 夏のたより
君が誰と何処で暮らそうとかまわない。

やっぱりそんなことだったんだね

もどかしい道


何故か貴方の前で笑えない
上手い話も思いつかない
くわえタバコのままライター探す
右の手のひらに掴んでるのに

貴方には届きそうで
いつまでたっても届かなくて
その理由はまだ分からないようで
僕から貴方まで定規をあてても
測られない

部屋を閉め切って手紙を書こう
上手い話も出来そうだから
ペンを握り直し深呼吸する
貴方の名前を書くだけなのに

貴方には届きそうで
いつまでたっても届かなくて
もう自分では手に負えない思い
その道に明るそうな友達の前でも
語られない

あなたを遠くに見てる
僕の道のりはもどかしい
何故自分では見つからないのか
この道を照らしてくれる誰かはなかなか
現れない

祭りのあと


学祭が終われば冬になるね
みんな巻き込んで冬が来るね
祭りのあとは寂しいものだと
誰が言ったかは知らないけれど

君はここんとこ多忙 僕以外のことで
僕と遊ぶ時間もなかった
祭りのあとを僕は待ってた

片づけが済むまで待てないからと
君を教室から連れだした
祭りの余韻に酔ったままの
君の上の空を僕も見上げてた

君はここんとこ多分 僕以外のことで
疲れ気味で愛想もなかった
祭りのあとを僕は待ってた

一昨年は手編みでセーターをくれた
去年くれた手袋を出した
今年は何かなと期待しながら
今朝届いた君の手紙を読んだ

君はここんとこ夢中 僕以外の人に
最後に話す気持ちもなかった
祭りのあとを僕は待ってた
祭りのあとで僕は気がついた

晴れ


例によってひとしきり泣いて
私はまた歩き出す
気が付かなかったの
もうこんなに空が高いこと
あなたの顔より上はずっと見えてなかった

晴れてます
今日も私とは関わりもなく
荒れてます肌は
夕べまたひとつ皺が増えて

例によって恨み言を重ね私はそれをひっくりかえす
気に入らなかったの もう こんなに忘れっぽいこと
あなたの顔も名前もすっきりさっぱりきっぱり

晴れてます
今日は私とは関わりもなく
腫れてます瞼
夕べまたひとつ齢がふえて

最高11度


午後の陽が短くて
もうすぐ夜が来てしまう
風がなかったから
でがけに毛布を干したんだね
でももうとりこまなくちゃね

最高気温は11度
天気予報でも当たるときがある
散歩の最中背を伸ばした僕らは気付く

こんな陽の日陰には
まものが棲んでいそうだよ
君がさらわれたら
僕には明日が来ないから
手と手を繋いでいるんだ

最高気温は11度
少しの間だけ太陽が優しい
握りしめた手を離した僅かな時間

眩しくない公園の光
冬はいやだねと君はまた言う

最高気温は11度
まだまだ東京も寒いのはこれから
毎年のことなのに12月の君は気が早い

オネツ


日曜日突然熱が出たようで
体温計はどこにしまってあるのやら
読みかけの本にも手が届かない
仕方なくありったけの布団をかぶります

ああ今頃あのこは何してる
ああ無理して約束しなくて良かった
オネツデテイマス

風邪ひきにゃ葛湯が良いと言ったような
珍しく母親の顔を思い出しまして
膝を打ち今こそそいつをつくらむと台所に立ちました
どうやって作るのだ

ああ今頃あのこは何してる
ああ誰でもいいから遊びに来てくれないかな
オネツデテイマス

日曜日突然熱が出たようで
珍しく流行の風邪にやられまして
明くる日の予定も思い浮かばない
ひたすらに目を閉じて 妄想に耽ります

ああ今頃あのこは何してる
ああカレーでも作りに来てくれないかな
オネツデテイマス

花粉


去年までは何でもなかったのに
今年はこの時期目が痒い
鼻も大変 花粉症ね
去年までは人のこと笑ってたけど
今年は毎日苦しくて
他人の痛みが分かった気がするの
この春突然君は言う
花粉症ね

杉よ桧よブタクサよ
僕にもっとふれ
僕にもっとかかれ
僕も僕も僕も他人の痛みをもっと知りたい
だってその方が優しくなれるって
誰かが言っていたもの

Information

型番:PMCD-IF16
発売:2004年 03月
価格:¥2,200

SHOP

ラブレコードで購入

ジャケット デザインはTOMO工房さま

2004年3月21日より、ラブレコードにて販売中

2004年3月21日当時の言

 収録曲目をご覧の通り、新作らしくない新作となりました。さぁ録音始めるぞと言い出してからの時間を考えると、拍子抜け感さえあります。
 毎月毎月、新しいうたをつくっては歌うというこの十年の中で、それぞれのうたには旬または賞味期間のようなものがあり、不幸なことに、あまり歌われていないうたがありました。実はそれらのことをひそかに僕は「君の知らないうた」と呼んでいます。
 録音という作業は、一時的にそのうたをつくって歌っていた頃の気持ちに戻ります。今回は、旬を逃したうたが多かった上に、自身の行く先を悩んでいた時期に重なっていたので、歌の録音を始めると、空席だらけの寒い四谷コタンの客席の映像が蘇ってくる不思議な感覚にありました。
 さきほど、旬を逃した、と表現しましたが、本来的意味で言えば、今回は季節の歌が多いです。それが故に年に一度か二度しか歌われない運命にあるのかも知れません。そして更に言えば、これら二つの「旬」を逃したうたが、まだいっぱいあるのです。今後の自分が楽しみです。

あまり乗り気ではないがご挨拶も表示する

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